福島県からの自主避難における賠償など法的支援

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筆甫地区集団ADR申立てに対する和解案提示にあたっての弁護団声明
2014年5月20日

平成26年5月19日

筆甫地区集団ADR申立てに対する和解案提示にあたっての弁護団声明

~賠償基準および国による放射能対策の抜本的な見直しを求めて~

筆甫地区損害賠償弁護団

 

1 今月15日、宮城県丸森町筆甫地区住民の9割以上が申立人となった原子力賠償の集団ADR申立てに対して、原子力賠償紛争解決センター(センター)は、「事故当時、筆甫地区に居住していた申立人らには、自主的避難等対象区域の居住者と同等程度の放射線被曝への恐怖や不安、これに伴う実生活上の制限・制約等があったものと認められるから、自主的避難等対象区域の居住者に準じて、その賠償が認められるべきである」として、平成23年3月11日時点で筆甫地区に居住していた全ての申立人に対して、福島県内の自主的避難等対象区域と同等の賠償を認める和解案を提示した。

2 これまで、福島第一原発事故による被害は福島県内の状況を中心に論じられてきた。筆甫地区においては、放射性物質による汚染度は福島県内と変わらないにもかかわらず、福島県でないことを理由に、原子力損害賠償紛争審査会(審査会)の中間指針追補において賠償の対象外とされ、また除染や健康調査などの政府の支援策においても、福島県と大きな格差が存在する。

今回のセンターの和解案は、筆甫地区の放射能汚染の状況とこれによる多大な被害を正面から認め、福島県内と同等の賠償を東京電力に求めるものである。また、福島県外の一定の地域を単位として賠償を認める初の判断である。私たちは、これを評価するとともに、東京電力に対して、速やかに和解案を受諾し、また今回申立てを行わなかった筆甫地区住民に対しても同等の賠償を行うよう求める。

3 今回の和解案は、これまで審査会の指針や東京電力の決定に基づいて行われてきた賠償の正当性に、大きな疑問を投げかけるものである。とくに、東京電力が独自に少額の賠償を行った丸森町の他地域や福島県県南地域、さらには賠償が一切なされていない福島県会津地域や隣接県の汚染地域についても、現在の賠償が不当なものであることを示唆している。

さらに、避難区域等についても、浪江町住民が申立人となった集団ADR申立てにおいて、センターが慰謝料として一律5万円の増額を認める和解案を提示するなど、センターにおける審理・和解案提示を通じて、審査会の指針が被害実態を十分に反映していないことが明らかになりつつある。

私たちは、審査会に対し、福島県の内外を問わず、被害の実態を慎重に調査・検討し、被害実態に即した十分な賠償が行われるようこれまでの指針を見直すことを求める。

4 また、今回の和解案に示されているように、福島県外においても、原発事故とこれによる放射性物質の拡散により著しい被害が生じていることが明らかになった。国は、原発事故子ども・被災者支援法に基づく支援対象地域について再検討を行い、福島県外の汚染地域も同地域に指定すると同時に、現在、福島県民だけを対象に実施されている健康管理調査や、県外では国の支援を受けることができるメニューが限定されている除染事業など、放射線による健康影響を防ぐための施策について、抜本的見直しを行うべきである。

以上

筆甫地区集団ADR申立てに対する和解案提示にあたっての弁護団声明(pdf)

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