福島県からの自主避難における賠償など法的支援

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「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」に対する声明
2013年8月30日

福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN)と支援法具体化訴訟弁護団は、本日、下記の声明を発表しました。

支援法基本方針案に対する弁護団・SAFLAN声明(PDF版)

2013年8月30日

関係各位

「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」に対する声明

支援法具体化訴訟弁護団
福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN)

1 はじめに

本日、復興庁は、原発事故子ども・被災者支援法(支援法)について、「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」(基本方針案)を公表しました。

支援法の施行から1年2ヶ月以上の間、福島第一原発事故に起因する被曝と被災者の生活上の苦しみ・負担は放置されてきました。基本方針案の公表は、遅きに失したと言わざるを得ません。

2 策定プロセスについて

復興庁が、支援法が求めている影響住民・避難者からの意見反映のための措置を経ることなく基本方針案を公表したことは、法の定めに反するものであり、極めて遺憾です。

さらに、復興庁は、今後の意見反映のための措置として、2週間という極めて短期間のパブリックコメントのみを予定しています。これは、支援法が求める意見反映のための措置を満たすものとは言えません。復興庁は、パブリックコメントの期間を延長すると同時に、各地で公聴会を行い、被災者からの意見聴取を行うべきです。

3 支援対象地域について

基本方針案は、事故後「相当な」線量が広がっていた福島県中通り・浜通り(避難指示区域を除く)のみを支援対象地域としています。事故による放射能汚染は、福島県に限られず、より広範な範囲に広がっており、上記の支援対象地域は狭きに失します。また、この地域設定は、福島県外も支援対象地域となる旨の国会での答弁=立法者意思にも反するものです。

そもそも、基本方針案においては、支援対象地域を「支援対象」とする施策は一つもなく、支援対象地域を定めた意味はほとんど存在しません。また、「準支援対象地域」も、施策毎にバラバラに設定されている対象地域を呼び換えただけに過ぎません。

4 支援施策について

今回公表された基本方針案には、福島県外への避難者に対する民間団体を活用した情報提供や相談対応が盛り込まれるなど、若干の前進と捉えられる施策が含まれていないわけではありません。

しかし、基本方針案の被災者生活支援等施策は、そのほとんどが既存施策の寄せ集めに過ぎません。要望が強い新規避難者向けの住宅支援は含まれておらず、避難のための移動の支援も無視され、居住継続と避難のいずれの選択も支援するとの支援法の理念を実現するものとは言えません。

また、福島県外における健康診断の実施や被災者への医療費の減免措置については、さらに今後の検討に委ねられることとされています。支援法の施行後1年2ヶ月以上経てようやく公表された基本方針案の内容が、単なる施策実施の先送りに過ぎないことには、失望を禁じ得ません。今回の基本方針案は、被災者の被曝による健康上の懸念に対応したものとは到底言えません。

5 今後の対応

福島の子どもたちを守る法律家ネットワークおよび支援法具体化訴訟弁護団では、今後も、多くの被災当事者や支援者と連携しながら、支援法の趣旨と理念に即した基本方針の制定を求めて働きかけを行っていきます。

また、基本方針案は、支援法具体化訴訟で原告らが求めていたものとはかけ離れたものとなっています。基本方針が閣議決定された際の訴訟上の対応については、今後原告と弁護団との間で協議する予定です。

以上

 

(別紙)

基本方針案に対する詳細コメント(暫定)

(下記は、8月30日時点における暫定的コメントであり、福島の子どもたちを守る法律家ネットワークでは、今後さらに分析を行いパブリックコメントを提出する予定である。)

○「Ⅰ 被災者生活支援等施策の推進に関する基本的方向」について

  • 基本的方向は、支援法2条の基本理念や同法3条の国の責務に言及しておらず、その結果、基本方針案全体として、2条の基本理念からかけ離れたものとなっている。
  • 新規施策として2つの施策しか挙げられておらず、政府自らが既存施策の寄せ集めに過ぎないことを認めている。

 

○「Ⅱ 支援対象地域に関する事項」について

  • 第1段落、第2段落において、居住者に対する支援の必要のみが強調されており、避難者も等しく支援するとの支援法の基本理念(2条2項)が無視されている。
  • 支援対象地域は、地放射線量が「一定の基準以上である地域」と定義されているにもかかわらず、「一定の基準」を明らかにしておらず、法の定めに反している。
  • 事故による放射能汚染は、福島県に限られず、より広範な範囲に広がっており、上記の支援対象地域は狭きに失する。また、福島県は全て支援対象地域となる、福島県外も支援対象地域となる旨の国会での答弁=立法者意思にも反する。
  • 支援対象地域より広範囲な地域を準じる地域として定めるとしているが、実際には、既存の施策毎にバラバラに設定されている対象地域を、準支援対象地域と呼び換えただけに過ぎない。

 

○「Ⅲ 被災者生活支援等施策に関する基本的な事項」について

  • 記載されている施策のほとんどが既存施策であり、支援法に基づく新たな施策は極めて限られている(現在詳細を分析中)。
  • 居住者(8条)、避難者(9条)、帰還者(10条)のそれぞれにつき掲げられるべき各施策を一括で記載することにより、避難者向け施策が乏しいことを隠蔽している。
  • 国立青少年教育施設におけるリフレッシュ・キャンプが福島県外でも行われることは評価しうる(要確認)。
  • 避難者への移動の支援(9条)としては、母子避難者向け高速道路の無料化措置のみであり、そもそも避難を実施するために必要な移動の支援策が欠けている。
  • 避難者の住宅の確保(9条)としては、民間賃貸住宅の借り上げの延長と公営住宅への入居円滑化という既存施策しかなく、両施策とも新規適用は2012年12月で打ち切られており(後者については確認中)、今後避難を開始する被災者の住宅の確保は全く手当てされていない。
  • 福島県外での健康管理支援(13条2項)のあり方については、有識者会議を開催するとして先送りにされている。
  • 医療費の減免措置(13条3項)については、何も言及されていない。「医療に関する施策の在り方」についても、結論が先送りにされている。
  • 福島県外への避難者に対する民間団体を活用した情報提供や相談対応については、適切な民間団体が請け負うことで、被災者の個別ニーズに対する対応が進むものと評価できる。
  • 各施策の「具体的な内容に被災者の意見を反映し、当該内容を定める過程を被災者にとって透明性の高いものとするために必要な措置」(14条)について何ら言及されていない。

 

以上

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