福島県からの自主避難における賠償など法的支援

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【緊急声明】区域外避難(自主的避難)について全ての損害項目への賠償を求める緊急声明
2011年11月28日

本日、以下のとおり、区域外避難についての全ての損害項目への賠償を求める緊急声明を執行しました。

原子力損害賠償紛争審査会 能見善久会長
同 委員各位

2011年11月28日

 

区域外避難(自主的避難)について全ての損害項目への
賠償を求める緊急声明

福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク
共同代表 弁護士 梓澤 和幸
同    弁護士 河﨑健一郎
運営委員 弁護士 福田 健治

 

【要約】

  • 区域外避難について低額の一律額のみを賠償することには何ら合理的理由がなく、また被害実態からもかけ離れている。
  • 区域外避難者に生じた被害と滞在者に生じた被害は内容が異なり、賠償額が同一でないとしても公平性の問題は生じない。
  • 区域外避難についても、避難指示等に基づく避難に係る損害項目と同一の賠償が認められるべきである。

1 2011年11月25日、第17回原子力損害賠償紛争審査会が開催され、政府による避難指示等がなされていない区域からの避難(以下「区域外避難(自主的避難)」)によって生じた損害の賠償範囲について、事務局から、「中間指針追補(自主的避難等に係る損害関係)のイメージ(案)」(以下「追補案」)と題する資料が配付され、議論が行われた。

2 追補案においては、区域外避難にかかる賠償項目として、①自主的避難によって生じた生活費の増加費用、②自主的避難により生じた精神的苦痛、③避難及び帰宅に要した移動費用の3点が挙げられ、これらについて、自主的避難等対象区域内の住居に滞在を続けた場合の精神的苦痛及び生活費の増加費用の合計額と同額について、子ども及び妊婦とその他の対象者に分け、それぞれ一律額を賠償する方向が示された。一律額について具体的な議論はなされなかったものの、これまでの議論の流れを見る限り、見舞金程度の低額に抑えられる可能性が極めて高い。

3 追補案が、「住民が放射線被曝への相当程度の恐怖や不安を抱いたことには相当の理由があり、また、それに基づき自主的避難を行ったことについてもやむを得ない面がある」と正面から認めていることは評価すべきである。

 しかし、区域外避難の合理性を認めながら、賠償額については、慰謝料を含む発生した損害の全てではなく、見舞金レベルの一定額の賠償にとどめようとするのは、背理である。少なくとも、追補案は、かかる損害の低額一律化が正当される理論的根拠を何ら述べていない。

 特に、区域外避難者の中には、避難のために退職・廃業を余儀なくされ収入の喪失に苦しんでいる方や、収入喪失への懸念から母子だけが避難し父との別居生活を強いられている方が多数存在する。追補案の賠償方針は、これら世帯に対し、実際の損害額からかけ離れた一定額のみを提示するものであり、被害の実態から著しく乖離したものであると言わざるを得ない。

4 追補案は、自主的避難に関する賠償項目について、「避難指示等の場合と同じ扱いとすることは、必ずしも公平かつ合理的ではない」とする一方、「自主的避難の有無によりできるだけ金額に差を設けないことが公平かつ合理的である」とする。

 しかし、公平かつ合理的な賠償とは、実際に生じた損害額(慰謝料や逸失利益を含む)の賠償であって、損害が異なる被害者間に同額の賠償を行うことは、公平でもなく合理的でもない。

 区域外避難者は、滞在者と比較すると、避難費用や営業損害・就労不能等による損害等が実際に発生しているのであるから、これらが賠償項目に含まれるのは当然である。実際に生じた損害を賠償した結果、区域外避難者が滞在者より多額の賠償金を受けることになったとしても、公平性の問題が生じないことはいうまでもない。

 なお、追補案は、「自主的避難者と滞在者を区別し、個別に自主的避難の有無及び期間等を認定することは実際上極めて困難であ」るという。しかし、すでに中間指針においても、緊急時避難準備区域からの自主避難について賠償を認めているが、かかる賠償において実際上の困難が生じているとの事実は東京電力からも原子力損害賠償紛争センターからも示されていない。早期の救済が目的であれば、まず一律額の賠償を行った上で、同額を超える賠償を希望する者について個別に全損害の賠償を認めることが合理的である。

5 ついては、私たちは、区域外避難者への賠償において、全ての損害項目について賠償がなされることを求める。具体的には、区域外避難に関する指針において、

(1) 区域外避難に係る損害項目は、原則として避難指示等に基づく避難に係る損害項目と同一であること

(2) 指針が定める一律額を超える損害が発生している場合には、個別の損害項目に基づく賠償が認められること

を明記すべきである。

 以上、緊急に声明し、追って詳細に意見を述べるものである。

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